旧桂ヶ谷貯水池堰堤

山口県山口市に大正初期に建設されたダムが今もある。

その大きさは高さ13メートル、長さ24メートルと小さいが、当時の人たちの暮らしを力強く支えたことだろう。

2016年には国登録有形文化財として登録されている。


とは言ったものの、そこに行き着くまでの道のりはあまり管理されていないようで、ぬかるみには足を取られ、草木には道を塞がれ、遂には道に迷ってしまい、一度は見物を諦めかけた程であった…。

こうしてみると単純なのだが・・・


しかし、せっかくここまできたのだ。

この先だろうか…と、半信半疑で斜面を這い上がると急に目の前が開けた。


どうやら正解だったようだ。

貯水池だったものが眼下に広がっていた。時期的なものなのだろうか、水は貼っていなかったが、背の高い雑草が水底(だった)を覆っていて、不気味な雰囲気を醸し出していた。

これが旧桂ヶ谷貯水池堰堤。

基本的な構造はコンクリートとのことだが、欄干の装飾や中央の取水塔はレンガ積みで、見事な作りをしている。


その姿は非常に厳かであった。


しかし、乾いた池と堰堤に大きく開けられた穴が、現状を突きつけていた。


このダムは、とうにその役割を終えたのだ。

技術は常に進歩していく。土木遺産は静かにその歴史を伝えていた。

廃墟見聞録

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