上水島鈴木精練所跡地
瀬戸内海には大小さまざまな島が700以上も浮かんでいる。
僕たちが今回むかったのはその中の一つ、岡山県倉敷市の沖合にある上水島である。
この島にはかつて銅の精錬所があった。名前は鈴木精練所。
しかし、鈴木精練所は第一次世界大戦後の銅価格の暴落により第二次世界大戦前には閉鎖、最盛時には280人もいた住人もいなくなり無人島となってしまった。
ここに向かうには無論、船がいる。
今回僕たちは釣り人向けに船を出している岸田渡船さんの船に乗せてもらい、島へと向かった。運よく比較的遅い時間に出る釣り人とタイミングが合い、7時に船に乗り込んだ。
船長さんには取材であることを説明しており、安全に陸に上がることのできる北の砂浜に卸してもらった。
島の西に広がる黒い岩盤のようなものの上に上った。これは銅を精錬するときに出るスラグらしい。現代では考えられないが、当時はゴミを海に垂れ流しても良かったらしい。船長さんが言うには銅の精錬時に発生する亜硫酸ガスも垂れ流しており、健康被害も出ていたらしい。
黒い大地を歩むとスラグに混ざってレンガや設備の形を伝える遺物が多く棄ててある。
続いてスラグ捨て場の東側に風速計のものが見えたため、そちらに向かった。近づいてみると風速計は「実験中」と書かれた廃車から伸びており、近くには実験の関係者が居たであろう小屋が潰れていた。小屋の後ろには当時のものが残った倉庫があった。岡山大学は気象の研究で有名らしく、その研究の遺物だろうと思われる。
僕たちはここから林を突き進み島の中央へ行こうとしたが、木々が生い茂っており進むには相応の装備がいると判断した。そこで島の外周を回り内部へと入る道を探した。
地図や航空写真ではわかりにくいがこの島は山がちになっている。上陸した北側の砂浜と東側の砂浜以外の海辺は岩場と崖になっており、結果から言うとあの判断は失敗だった。三時間かけて東の砂浜に着いた頃には僕たちは疲弊しており潮も満ちて外周を回ることも難しい状況となっていた。
ただし、外周を進む中でも発見はあった。崖を成している岩はよく観察すると人口の岩石が多く含まれていた。恐らく銅を融解させるための炉に使われた材料がそのまま破棄されて固まったものだろう。
西側の砂浜にもレンガや金属の遺物が残っていた。
海上には大小様々な船が常に往来して、その向こうには水島コンビナートの製鉄所や化学メーカーがモクモクと煙を登らせている。この島の銅精錬所もかつては彼らと同じくこの国の産業を支える大事な工場だったのだ。そんなことを思いながら迎えの船が来るのを待った。
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